神奈川県総合リハビリテーションセンター

文字サイズ

かながわリハビリロボットクリニック(KRRC)

かながわリハビリロボットクリニック(KRRC)

神奈川リハビリテーション病院では「かながわリハビリロボットクリニック」(略称KRRC)として、ロボットを活用したリハビリテーションの相談窓口を設置しています。
KRRCでは次の相談に対応します。

1 筋電義手の処方・訓練

未来筋電義手センター

先天性や労災などにより前腕等が欠損した方について、筋電義手の処方・訓練について相談に応じています。患者さまの状況やニーズにより、能動義手や装飾義手についても同時に評価を行い、筋電義手の必要性が高いと判断できれば、訓練を進め公費による取得の申請を目指します。

(1) 筋電義手とは

生まれつき手のない赤ちゃんが一定数生まれています。事故や病気で手を失う方もいます。そうした方々が使う人工の手、義手というものがあります。義手には、動かすことはできないが見た目を重視した装飾義手、両肩の動きでハーネスを介し金属製の手先具の開閉を行う能動義手、腕の筋肉の筋電位を感知しモーターにより電気的に動かすことができる筋電義手というものがあります。

筋電義手は、筋肉の発生させる表面筋電位を感知しモーターで義手を動かし、掴む、離すという動作を行うものです。自分の意志で動かせる義手で、見た目も良いものです。肘から先が欠損した方が対象になります。強い力で掴むことができ、習熟訓練を積むと両手動作が可能となります。

当院では、前腕等が欠損した方を対象に、筋電をうまく発生させる訓練からはじめ、基本的操作訓練、さらには患者さん個々の生活課題を把握しながら、例えば、料理、洗濯物を干すといった日常生活での動作や、仕事でこういう両手での動作を行いたい、学校で両手を使った実験や実習があるなど、より具体的な課題に対して筋電義手の操作訓練を進めていきます。平行して、切断部にはめる部分(ソケット)の制作をすすめ、適切な電極の位置の選定やフィット感、使用にあたり痛みや不快感がないよう調整を進めていきます。

筋電義手の病院内での訓練、調整が進むと、次は自宅に持ち帰り、日常生活で実利用する段階となります。自宅、学校や職場で実際に使って、さらに習熟を高めます。その後、ある程度の期間を経て、公費での取得を目指し市町村長に申請を行います。

平成29年度から始まった神奈川県の事業により、複数人の方が貸出用筋電義手を活用することができ、自宅や学校、職場で利用を進めています。
訓練は外来でも可能です。当院では、肘から先が無い方で、公費申請を目指せる方が筋電義手の対象となります。見た目も良く動かせる筋電義手を、新たな自分の“手”として獲得できるよう一緒に頑張ってみませんか。ぜひご相談ください。

(2) 筋電義手訓練中の小児ご家族からのコメント

~ できる限りのことはやってあげたい ~
妊娠中に手が無いことがわかり、この子に何かできることはないか、できる限りのことはやってあげたいと情報を集めました。出産後に通院した医療機関より神奈川リハビリテーション病院の取り組みを紹介され、筋電義手の訓練につながりました。まだ1歳に満たない時期から通院しましたが、装飾用の義手とソケット(義手と腕とを固定する器具)をある程度の時間を付けた状態に慣れることからはじめ、つかまり立ちも義手で体を支える、哺乳瓶を義手で添えるなど両手を使う場面も見ることができました。今は筋電義手を付け、おもちゃで遊びながらスムーズな開閉ができるよう自宅でも使用時間を延ばすようにしています。この子にできる限りのことはやってやりたい、今の時点で可能性を狭めたくはない、多くの子が普通に経験していくことを同じように経験させてあげたい、そう思っています。

(3) 医療スタッフからのコメント ~医療的な側面、発達面について~

小児期、特に乳幼児期から筋電義手をはじめとする義手装着のメリットは、より自然な両手動作の獲得だけでなく、欠損側の身体イメージの構築、身体バランスや非対称性の改善、といった効果が期待できます。片手が無いことの代償動作として腰をかがめるなど無理な姿勢をとることも減り、筋電義手でしっかりつかむことができるので、靴紐を結ぶ、ハサミを使うといった何気ない日常の両手動作も可能となってきます。
特にこれまでの小児期の症例では、次のような効果がみられています。

  • 義手を付けて、遊ぶ、口に持っていくなどの行為を通じ、欠損肢の延長された身体イメージが構築され、体の一部として義手が認識していくことを期待できる。
  • つかまり立ちや伝い歩きで、義手で体を支えることができた。
  • 哺乳瓶を自然に両手で添えることができた。
  • 義手に付けたおもちゃを振る、両手で太鼓をたたくといった遊びを通して、欠損肢の発達を促すだけでなく、欠損側に注意が向くことで、姿勢の非対称性が軽減し、座位バランスの発達も促せた。
  • 義手でおもちゃを把持したまま、非欠損肢で別の遊びができた。
  • 義手で顔を掻く、口から溢れそうな時に押し込むなど、観察された。
  • 筋電義手の開閉が本人の意思で可能になると、より自然な両手の動作となり、精神面での発達にもよい影響が出ると考えられる。
(4) 筋電義手ユーザーのコメント ~ 両手を使い世界が広がる ~

生まれつき左手がないのですが、社会人になるまで義手は装着してきませんでした。幼少時は情報が少なかったこと、経験できる場も少なかったこともあると思います。働くようになり筋電義手のメリットを感じ義手の装着を考えました。
学生時代は、左手の無い私に先生をはじめとする周りの方々がさまざまな工夫をしてくれました。自らも努力し挑戦してきました。友人など周囲の応援もあり、そのおかげで健常者の人と交じっても、遜色無くやってこられました。
社会人になり、仕事で掴む、離すなどの両手の動作ができると仕事の幅が広がると考え、神奈川リハビリテーション病院で筋電義手の訓練を受けることにしました。義手をつけた事で料理をはじめとした日常生活も仕事も、いろいろとスムーズにできるようになってきました。
片手でも生きていけると思いましたが、筋電義手を装着して両手があるとこんなに楽なんだと分かりました。両手を使える生活を知り世界が広がりました。
「やりたかったけどできなかった」ということが少しでも減ればうれしい。「自分はどうせできない」と思うのではなく、工夫をしてチャレンジをすれば、できることはたくさんある。「片手しかないから仕方がない」という自分の殻を乗り越えてほしいと思います。私にとって工夫のひとつは、筋電義手を使うことでした。チャレンジできる、経験できる機会を増やし、筋電義手が普及して欲しいです。

(5) 家族会の開催(MIRAIラボ) ~ ひとりでないよ

未来筋電義手センターでは、当院で対応している小児の筋電義手当事者とそのご家族を対象に、交流、ピアサポート等を目的とした家族交流会を実施しています。普段の生活では、同じような手を持つ同世代の方となかなか出会うこともなく情報も少ないというのが実情です。こうしたことから、お子さん同士の交流の場を作り「ひとりではないよ」という意識づけや親同士の情報交換、先輩の当事者の経験談を聞くなどを行っています。
イベント当日は、年齢に応じた活動を行います。ボール遊びやマットを使った運動など遊びを通じたこども同士の交流と家族向けの情報提供などを行い、自然な形で交流の場を提供します。この活動は、医師、作業療法士や義肢装具士の他、ソーシャルワーカー、体育指導員や公認心理士(臨床心理士)、リハエンジニアなど様々なスタッフがかかわります。通常の病院で行う義手の訓練だけでなくもっと幅広い全人的な成長を目指しております。こうした活動を通し、当事者及びご家族の不安の軽減や生活のヒントなどが得られればと思います。

1-2 筋電義手バンク 寄付のお願い

未来につなげる“新たな手”にご支援を

手の無い方が利用する義手「筋電義手」 生まれつき手の無い子どもたちへ“新たな手”のきっかけづくりと未来を支えてください。

制度的な経費の課題 ~ 習熟のための訓練用義手は国の制度外

現在、国内で利用されている筋電義手は150万~200万円するものですが、訓練用の義手は医療保険や福祉制度で準備することができません。
筋電義手は、障害者総合支援法の場合、公費支給が認められると利用者負担は原則1割、最大37,200円です。(本人又は世帯員のうち市町村民税所得割額が46万円以上の方がいる場合は、公費負担の対象外となります。)しかしながら、訓練を受け習熟しないと公費認定が受けられないというジレンマがあり、訓練期間中の経費負担の課題があります。
義手はそれぞれの手に合わせて作成するため、複数の方で共用できるものではありません。また、病院内だけでなく、日常生活や仕事で実用性を高める必要があり、長期にわたり貸し出しする必要があります。特に子どもにとっては、年齢とともに遊びや学業で両手動作の機会も増え、2年から3年、人によってはそれ以上の訓練期間が必要となり、成長の過程で義手が小さくなれば作り変えていくことから、一人の子どもに対して数本の義手が必要となってきます。
この「筋電義手バンク」は個々人のふるさと納税や事業者様からの寄附により運営をいたします。先天的に手がない状態で生まれてくる子供たち、事故や病気で手を失った方々に、皆さまからのご支援で“新たな手”のきっかけづくりと未来を支えてください。

寄付の方法

①ふるさと納税 (ふるさとチョイス)
https://www.furusato-tax.jp/city/product/14000

神奈川県内の方は、返礼品はございませんのであらかじめご了承ください。税控除は受けられます。

・神奈川県内にお住いの方
ふるさとチョイスの神奈川県のページにて「お礼の品不要の寄付をする」をクリック、「寄付金額」を入力、「寄付をする」、ログイン・会員登録・会員登録無しのいずれかで進めていただき「寄付金の使い道を選択」「かながわ筋電義手バンク」にチェックしてください。
・神奈川県外にお住いの方
そのまま返礼品を選択してお進みいただき、「寄付金の使い道を選択」「かながわ筋電義手バンク」にチェックしてください。

②ブックキフ(ブックオフへの売却金の寄付)

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bs5/cnt/f520003/index.html

③病院へ直接の寄付

電話にて病院にお問い合わせください。
046-249-2220(代表)

お問い合わせ先

患者さまからの訓練実施や処方のご相談
総合相談室 TEL:046-249-2612

メディアによる紹介

ベネッセ たまひよonline 2023年11月掲載
当院の小児患者のご家族が取材を受けました。

日本テレビ 24時間テレビ 愛は地球を救う 2022年8月28日(日)放送
当院の患者さんが出演しました。得意なダンスの披露と筋電義手の訓練の状況などが放送されました。

タウンニュースデジタル版 動く義手「バンクで広がれ」 2022年5月13日掲載

東京新聞 「筋電義手」普及へ 県がバンク 周知兼ね購入費募る 2022年5月8日掲載

毎日新聞 子どもの「使いこなし」支援 訓練用筋電義手確保へ 2022年5月12日掲載

神奈川新聞 神奈川県が節電義手普及へ寄付募る 訓練拠点整備に活用 2022年5月17日掲載

読売新聞に当院の取り組みが紹介されました。 2022年6月2日掲載

FMヨコハマ ラジオに出演しました~筋電義手 知っていますか 2022年5月7日(土)放送
手の無い方が使う筋電義手、利用されているご本人を交え、その紹介をします。使ってみて良かったこと、訓練で大変だったこと、同じ当事者へのメッセージなど、ラジオで放送されました。(放送終了しました:下記よりお聞きすることができます)

テレビ朝日 「TOKYO応援宣言」 2019年9月1日(日)放送
当院の筋電義手の取り組みが紹介されました。訓練風景の様子もご覧にいただけます。

神奈川新聞 「未来筋電義手センター」開設へ 2021年2月10日掲載

黒岩知事 病院訪問 (2020年10月28日)
神奈川リハビリテーション病院で行っている「かながわリハビリロボットクリニック(KRRC)」の取り組みを中心に黒岩知事の病院訪問がありました。ロボットや筋電義手の訓練の様子をご覧いただき、患者さまや当院のスタッフとの意見交換を行いました。この訪問の様子は、朝日新聞に掲載され、また、「かなちゃんTV」にて知事の現場訪問でのコメントが寄せられています。

2 ロボットを活用したリハビリテーション

脊髄損傷等の患者を対象に、サイバーダイン社のHAL®等を活用したリハビリテーションを行っています。また、脳卒中などによる片麻痺患者を対象にパワーアシストハンド、レッグを活用した訓練を行っています。これらの訓練は、医師の診断に基づき、身体状況などにより適用できない場合があることにご留意ください。

お問い合わせ先

患者さまからの訓練実施や処方のご相談
総合相談室 TEL:046-249-2612

3 ロボット等の開発における企業や大学への支援

企業や大学研究室で開発中の福祉機器やシーズに対し、臨床現場からの視点で患者ニーズや使い勝手を評価し、改善点を提案します。場合によっては、共同研究の形で開発に協力していきます。神奈川県が進めている「さがみロボット産業特区」における実証実験のフィールドとして、開発中の製品評価も行っています。

お問い合わせ先

発企業や大学研究室からの開発支援のご相談
研究部(担当 村田、前田)  電話 046-249-2590
KRRCポスター
画像をクリックすると別ページが開きます。
Page Top