神奈川県総合リハビリテーションセンター

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診療科のご紹介

小児科

診療内容

当科では小児科医・小児神経科医が他科の医師やさまざまな職種のスタッフとチームを組み、障害をお持ちのお子さんたちに対して、回復期(急性期治療後)から生活期(病状が安定している時期)にかけての医療・支援を総合的に提供しています。チームには理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、(公認)心理士、体育指導員、リハビリテーション工学士、医療ソーシャルワーカー、看護師、栄養士、保育士、学校教員らが参加しています。

入院診療の対象は主に後天性脳損傷(脳外傷・脳血管障害・脳腫瘍・急性脳症・低酸素性脳症など)、脊髄損傷、脳性麻痺、神経疾患などの方々です。

30年度入院統計

脳炎・脳症・髄膜炎 26
脳外傷 10
脳血管障害 21
低酸素性脳症 7
脳腫瘍 3
脊髄損傷 14
その他の小児神経疾患 14
その他 8
合 計 121名

回復期に入院された場合、機能回復のための治療、訓練はもちろんのこと、生活の場(自宅)・学習の場(学校)へ安全に安心して戻るための支援、ご家族への支援などを総合的に行っています(総合リハビリテーション)。

脳損傷では高次脳機能障害が見られることが多く、高次脳機能障害に上手に対応することが学校生活に適応するための鍵となります。高次脳機能障害の症状・経過は一人ひとり異なるため、オーダーメイドの診療が必要となりますが、当院・当科では20年以上にわたり高次脳機能障害の診療を行っており、その経験を生かして最適な診療ができるよう努めています。また脊髄損傷についても全国有数の診療経験があります。多くの患者さんが集まってこられることで、同じ悩みを持つ仲間同士の支え合いの場ともなっています。

日常生活に戻った後、成長・発達や環境の変化(進級・進学など)に伴って新たな問題が生じることもあります。そのような場合にも必要に応じて入院診療を行っています。

外来では上記疾患に加えて、発達障害・てんかん・二分脊椎などのお子さんの診療も行っています。残念ながら、外来リハビリテーションの対象は近隣市町村の方々に限らせていただいています。また入所施設である七沢療育園では、重度重複障害がある方々に対して診療を行っています。

お子さんとご家族に少しでも笑顔が戻るよう、それぞれの生活を取り戻せるよう、日々努めています。

外来

月曜日~金曜日の午前中になります。新患は、原則として月曜日、水曜日です。
いずれも予約制(TEL:046-249-2489 受付時間 13:00〜16:00)です。

スタッフ

  • 小児科部長
    吉橋 学(よしはし まなぶ)
    専門医資格
    日本小児科学会専門医
    日本小児神経学会専門医
    日本リハビリテーション医学会専門医
  • 小児科副部長
    飯野 千恵子(いいの ちえこ)
    専門医資格
    日本小児科学会専門医
    日本リハビリテーション医学会専門医
  • 小児科医長
    市川 和志(いちかわ かずし)
    専門医資格
    日本小児科学会専門医
    日本小児神経学会専門医
    日本てんかん学会専門医
  • 医師
    安西 里恵(あんざい りえ)
    専門医資格
    日本小児科学会専門医
    日本小児神経学会専門医
  • 栗原まな医師の写真
  • 医師
    栗原 まな(くりはら まな)
    専門医資格
    日本小児科学会専門医
    日本小児神経学会専門医
    日本リハビリテーション医学会専門医
    日本てんかん学会専門医

小児リハビリ病棟の看護

小児のリハビリは、訓練室で訓練する時間だけがリハビリではなく、病棟における日常生活の自立に向けた支援がリハビリにつながっています。病棟ではこどもの生活環境を整え、一人ひとりの成長発達や障害に応じて、自分のことが自分でできるための方法を考えていきます。例えば、鼻からチューブで栄養をとっている子どもにとって、口から食べる事ができるようになることは大きな喜びです。看護師は子どもの持っている機能と嗜好や食べられる量・形態を見ながら、少しでも口から食べる事の可能性を引き出せるよう摂食嚥下訓練をおこなっています。さらに、このことが家庭で続けられるよう栄養士と連携しながら、食品の選択や調整をおこなっています。また退院後の生活を考え、食事介助の方法を家族に習得していただいたり、必要があれば、肺炎を起こさないよう吸引の手技やチューブの挿入方法を指導しています。


プレイルーム
看護師は、本人や家族へ精神的な支援もおこなっています。例えば、子どもの将来に対する不安が強い家族に対しては、悩みをうかがい今後について一緒に考えるなど、家族の精神的ストレスがやわらぐよう対応しています。また、家族間に子どもの療育に対する意見の違いが生じる場合もあるため、それぞれの思いを代弁するなども行い、子どもと家族のQOL向上を支援しています。

臨床心理士のかかわり

後天性脳損傷とは

人は、脳の機能のひとつである高次脳機能(周囲の情報をキャッチする・考える・行動する・おぼえる・学ぶ、など)を使って毎日暮らしています。そのため、脳が病気やけがで損傷を受けると、日常生活にも影響が見られます。それは身体への影響よりも見えにくく、対策を立てにくいため、仕事や勉強への影響だけでなく、うまくいかないことの積み重ねによる自信喪失など、二次的な影響が生じます。特に子どもの場合、次の成長=発達にも影響が出る場合があります。 そして、一緒に生活する家族や学校の先生・友達などにとっても、本人の変化にどう関わればよいか分からず、戸惑うことが多くなりがちです。 当院では、脳に病気やけがで損傷を受けた(後天性脳損傷)子どものリハビリを行っています。

臨床心理士の後天性脳損傷への4つのかかわり

臨床心理士は、後天性脳損傷に由来する、目に見えにくい高次脳機能への影響に対するかかわりを通して、子どもと家族へのこころのケアを実施していきたいと考えています。下記の関わり全体を通して、その子がその子らしく、のびのび振舞えるよう支援していくことが、リハビリの大きな目的です。
後天性脳損傷を受けた子どもの(心理的)リハビリには、4つの重要な柱があると考えています。

1. 分かりやすい=「発達や高次脳機能の状況を知り、何がおきているか理解しやすくする」
高次脳機能がうまく働かなくなると、まわりのことや自分のことがよく分からなくなることがあり、とても不安な状況に陥ります。そこで、検査や遊びを通して、発達や高次脳機能という「目に見えにくいもの」を「目に見える形」で表し、今何が分かりやすくて、何が分かりにくいかを、子どもとともに確認していきます。また、その姿を家族にも見てもらうことで、子どもをより総合的に理解できる情報を提供できるよう努めています(評価と呼んでいます)。
2. 「できること・うまくいくこと=自信を持つ」
今の子どもの状況に合った生活・学習・遊びの場面を提供し、「できる・うまくいく」楽しさを体験してもらい、自信をつけてもらうことです。これは入院リハビリの中心ともいえます(認知訓練と呼んでいます)。
3. 「安心」
子ども自身の不安、家族の不安をうかがいながら、子どもの状況や今するべきことを話し合い、生活上の課題を整理し、訓練場面でうまくできるようになったことを日常生活の中でも無理なくスムーズに楽しく行えるよう支援していきます。家庭だけでなく、学校でも安心して過ごせるよう、地域への情報提供を行う場合もあります(環境調整と呼んでいます)。
4. 「楽しい」
子どもにとって「遊び」や「楽しい」ことは大切です。病気やけがのために、家を離れて入院しなければならない、思いっきり身体を動かすことや友だちと遊ぶことを我慢しなければならない、色々なことが病気やけがをする前のようにうまくいかなくて、イライラしたり悩んでしまう…など、子どもにとってリハビリはつらいことも少なくありません。そんなときに、「楽しく」、「ホッとできる」遊びの場を提供し、元気を取り戻してもらうことも大切なことと考えています。
高次脳機能のリハビリには時間がかかると言われています。そのプロセスがつらいことばかりでなく、達成感があり、安心して、楽しく、元気に過ごせるように…と日々考えています。

かもめ学級 (神奈川県立秦野養護学校 病弱教育部門・施設訪問教育)

かもめ学校は、平成7年度に神奈川県立学校の施設訪問教育の場として、神奈川リハビリテーション病院内に開設されました。
入院期間中の小学生・中学生が、リハビリの合間に院内にあるかもめ学級の教室に来て学習しています。
かもめ学級で学ぶ子どもたちは、心身の状態がそれぞれ大きく異なります。そのため、一人ひとりの現状に合った学習を行うとともに、入院に伴う不安や寂しさなどを少しでも和らげられるよう配慮しています。

そして退院時には、病院の医療スタッフの方々と連携し、保護者や復学先の先生方などに入院中の情報提供や退院後のよりよい学校生活に向けてのアドバイスを行い、子どもたちが安心して学校に戻ることができるよう努めています。
また、かもめ学級では、義務教育段階の子どもたちの学習指導だけでなく、主治医を通して就学前のお子さんの教育相談にも応じています。

教員の研究活動に病院の医師や臨床心理士の先生方のご協力をいただき、平成25年度に『小児の高次脳機能障害 支援ガイドブック・チェックリスト付』を作成しました。
高次脳機能障害がある子どもたちが退院するときには、保護者の方や復学先の先生方などの関係者にこのガイドブックを配布し、退院後の学校生活に役立てていただいています。
このガイドブックは、神奈川県立秦野養護学校のホームページからもダウンロードできるようになっています。
どうぞご活用ください。

児童生徒作品

アトムの会 (代表・齋藤純子 記載)

ある日、突然
なぜうちの子が…
わが子に降りかかった災難が、わが子をそして家族をもまるで深い霧がかかったかのように…
出口の見えないトンネルに入ってしまうような、そんな状況に追い込まれていく。
昨日までは元気だった、笑っていた、その子があの一瞬から変わってしまった。

私たち、後天性脳損傷の子どもをもつ親の会(アトムの会)は同じ境遇にある家族たちが語り合い、共に泣き、励まし合い手を取り合って情報を共有し、学び合い、社会に働きかけていこうと2001年5月29日に発足しました。
当事者の家族の方々を中心に神奈川リハビリテーション病院の小児科をはじめとする病院スタッフの方々や多くの先生に支えていただき、年に三回、神奈川リハビリテーション病院を会場に定例会を行っています。定例会には小・中学生になった子どもの家族の参加が多く、先を行く方々の体験談やアドバイスが生きた情報として提供されています。笑いあり、涙あり、怒りあり…普段なかなか理解されない一方通行な気持ちが同じ境遇の仲間がいることで解放され、行き来し「ひとりじゃない」とお互いを支える場となっています。

アトムの会ホームページ
http://atom-kids-2016.jimdo.com/

代表 齋藤純子
Email:jun7269@t.vodafone.ne.jp

神奈川リハビリ小児科で執筆した書籍

眼で見る小児のリハビリテーション 第3版
診断と治療社
小児リハビリテーション医学 第2版
医師薬出版
よくわかる子どものリハビリテーション
クリエイツかもがわ
小児頭部外傷~急性期からリハビリテーションまで~
医師薬出版
ふたたび楽しく生きていくためのメッセージ(後天性脳損傷の子どもを もつ家族との対話)
クリエイツかもがわ
小児の高次脳機能障害
診断と治療社
わかりやすい小児の高次脳機能障害対応マニュアル
診断と治療社
写真と症例でわかる小児の高次脳機能障害リハビリテーション実践ガイドブック
診断と治療社
よくわかる子どもの高次脳機能障害
クリエイツかもがわ
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