神奈川県総合リハビリテーションセンター

文字サイズ

診療科のご紹介

泌尿器科

対象疾患

あらゆる疾患を原因とした排尿障害の診断と治療を専門としています。
その中でも特に、神経因性膀胱と呼ばれる状態についての検査・治療については、当院開設以来積み重ねてきた豊富な経験と実績があります。
※神経因性膀胱とは、さまざまな疾患や外傷による神経障害を原因とした、膀胱・尿道の機能障害のことをいいます。
当院では、脊髄損傷(外傷、血管障害(梗塞・出血)、腫瘍、変性疾患など)、二分脊椎症(先天的な脊髄の機能障害)の患者さんが多いのが特徴です。その他にも脳疾患(血管障害(梗塞・出血)の後遺症、腫瘍など)、その他の神経難病(脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、パーキンソン病など)、末梢神経障害(糖尿病、骨盤内手術による後遺症)などによる排尿障害の診療も多く行っています。
また、当院はリハビリテーションのための病院であるとともに、あらゆる障がい者に医療を提供するための病院です。泌尿器科では、障がい者に発症した尿路系の疾患(神経因性膀胱、尿路感染症、膀胱結石)に対応しています。さまざまな障がいをお持ちの方で排尿に関する問題でお困りの方はご相談ください。
2023年現在、間質性膀胱炎に関する診療も開始しています。泌尿器科をはじめて受診される方、紹介状をお持ちの方の手順でご連絡ください。

神経因性膀胱、過活動膀胱の検査・治療

問診票や排尿記録を見た上で、排尿機能の評価のため尿流測定や膀胱内圧測定などの検査を行います。検査は平日午後に予約を取った上で行います。検査結果を踏まえて、最善の排尿方法や治療法を提示します。
ご自身での排尿ができない方、排尿があっても残尿が多い(排尿直後に多量の尿が残っている)方には間欠導尿※をお勧めします。外来での指導時間では間欠導尿の習得が困難な場合には短期間の入院での指導・練習も検討します。間欠導尿の実施が難しい場合は尿道カテーテルを留置します。
※間欠導尿とは、膀胱にある程度尿が貯まったところで(または一定の間隔を設定して)、尿を出すための管(カテーテル)を尿道から挿入し、膀胱内に貯まった尿を排出する方法です。
膀胱に少量しか尿が貯まらない場合や膀胱が勝手に収縮してしまい尿漏れをきたしてしまう場合には薬物治療を行います。抗コリン剤やβ3アドレナリン受容体作動薬を使用します。片方の薬で十分な効果が得られない場合には両者を併用することも可能です。それでも効果が得られない場合や副作用等で内服治療が難しい場合(難治性神経因性膀胱、難治性過活動膀胱)、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を行うこともできます。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

難治性神経因性膀胱、難治性過活動膀胱の方に行う治療法です。
ボツリヌス療法は、上記の泌尿器科疾患の他、痙縮・顔面痙攣・斜視などにも適応のある保険収載された治療法です。泌尿器科領域では、2012 年に米国で初めて神経因性排尿筋過活動に対する適応を取得して以来、現在では世界 90か国以上で治療抵抗性の過活動膀胱および神経因性膀胱の標準治療として普及しています。
内視鏡下に膀胱の排尿筋内に直接ボツリヌス毒素を注射して一過性の不全麻痺を引き起こし、排尿筋の異常な収縮を軽減する治療法です(開腹手術ではありません)。効果持続期間は、過活動膀胱では 6~10か月、神経因性膀胱では8~11か月程度といわれています。侵襲性は低く、一定の期間を空ければ繰り返しの実施も可能です。
当院では、安全性を重視し、短期入院・麻酔下で手術を行っています。
治療適応があるか不明な方は外来でお尋ねください。

膀胱結石

当院では、排尿障害に合併することが多い膀胱結石については、内視鏡による手術を数多く行っています。小さい石で、内視鏡操作が短時間で安全に行える場合は外来での手術が可能です。小さい石でも内視鏡操作で自律神経過反射が起きてしまう方の場合や大きい石で外来での結石除去が困難な場合には、麻酔(脊椎麻酔または全身麻酔)をして手術を行いますので、入院が必要になります。
腎結石・尿管結石(上部尿路結石という)に対しては、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)または尿管用の細い内視鏡による経尿道的尿路結石除去術(TUL)を行いますが、当院にはこれらの治療に必要な設備がありません。腎結石・尿管結石の治療は設備の整った病院で治療をお受けください。

間質性膀胱炎

2019年版の診療ガイドラインによると、「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群」(Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome: IC/BPS)とは、「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛,圧迫感または不快感があり,尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い,混同しうる疾患がない状態」と定義されています。免疫学的な炎症反応が重要と考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
ガイドラインで推奨されている治療としては、緊張の緩和や食事指導などの保存的治療、抗うつ薬であるアミトリブチリン(製剤名:トリプタノールなど)の内服治療、膀胱水圧拡張術があります。間質性膀胱炎(ハンナ型)に対しては、膀胱水圧拡張術に加えてハンナ病変の電気またはレーザーによる焼灼を行う内視鏡手術、および、DMSO製剤(製剤名:ジムソ)の膀胱内注入治療も推奨されています。

外来

月曜日から金曜日(平日)の午前中の予約制です。
ただし、排尿障害の治療・評価には、ほとんどの場合、排尿機能に関する検査を必要とします。治療法が適切かどうかの確認のために定期検査が必要となる方もいます。
これらの検査には1時間以上の時間がかかりますので、初回受診時は、原則として簡単な問診及び後日の検査の説明と予約のみとなりますのでご了承ください。
重度の障がいをお持ちで通院が困難な場合、症状が複雑でお話が長くなりそうな場合、検査をご希望の場合、または遠方(県外)からお越しの方の場合には、初診時から十分に時間をとり、場合によっては初診時から検査ができるように配慮します。予約センターに直接電話でご相談ください(泌尿器科をはじめて受診される方、紹介状をお持ちの方)。必要に応じて午後の別枠で診療をします。

検査入院・自己導尿の訓練・手術のための入院

通院が困難な場合あるいは排尿の状況に関して時間をかけて検査・観察・説明する必要があると判断した場合には、短期間(1~2週間)の入院をお勧めすることがあります。また間欠導尿と呼ばれるカテーテルを用いた排尿方法を習得するための練習目的の入院も可能です。
このような入院をご希望の場合も、初めは外来受診をしていただき、医師の判断の上で入院の予約をすることになります。

泌尿器科をはじめて受診される方、紹介状をお持ちの方

予約センターで受け付けている午前中の一般の受診枠はたいへんに混雑いたします(特に10:30以降)。また、初診時は原則として、問診と検査の予約・説明のみになります。障がいのために外出することが容易でない、遠方からの来院で通院が困難である、などの特別な事情がある方には、初回から必要な検査と診断・説明ができるように午後の検査枠を用意するなどの予約の配慮を致しますので、当院予約センターまでお電話ください。「初めての受診。泌尿器科の受診について相談したい。」とお伝えください。紹介状の有無などを確認させていただき、泌尿器科医と相談した上で、今後の対応につきご案内させていただきます。

スタッフ


  • 部長
    鈴木 孝尚(すずき たかひさ)
    専門医資格
    日本泌尿器科学会専門医および指導医
    日本排尿機能学会専門医
    日本透析医学会専門医
    日本臨床腎移植学会専門医
    日本移植学会認定医
    日本がん治療認定医機構がん治療認定医
    医学博士
    専門領域
    神経因性膀胱、排尿障害、脊髄損傷、二分脊椎、間質性膀胱炎、泌尿器科一般
    所属学会
    日本泌尿器科学会
    日本排尿機能学会
    日本脊髄障害医学会
    国際禁制学会(International Continence Society)
    日本間質性膀胱炎研究会
    日本透析医学会
    日本臨床腎移植学会、日本移植学会
    日本緩和医療学会(泌尿器症状ガイドライン作成WPG員)
    日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 ロボット支援手術プロクター(前立腺)
    日本老年泌尿器科学会
    日本女性骨盤底医学会

  • 副部長
    佐保田 珠弥(さほだ たまみ)
    専門医資格
    日本泌尿器科学会専門医
    専門領域
    神経因性膀胱、排尿障害、脊髄損傷、二分脊椎、泌尿器科一般
    所属学会
    日本泌尿器科学会
    日本脊髄障害医学会

  • 医師
    齋藤 智樹(さいとう ともき)
    専門領域
    泌尿器科一般
    所属学会
    日本泌尿器科学会
    日本生殖医学会
    日本アンドロロジー学会

研究活動

Page Top