神奈川県総合リハビリテーションセンター

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脊髄損傷

泌尿器科

脊髄損傷の排尿管理と尿路合併症について

神奈川リハビリテーション病院泌尿器科は、開設以来、特に脊髄障害者の排尿管理と尿路合併症の治療を専門としている診療科です。
脊髄障害には高率に排尿障害を合併いたします。不全損傷の一部の方以外は、ほとんど全員の方に排尿障害があります。膀胱に尿をためたり出したりする機能は、脊髄の一番下の部位にある排尿中枢というところで制御しています。この排尿中枢は大脳や脳幹部からの指令によって調節されていますので、脊髄のどの部位に障害を受けても、排尿障害は必ずおこるのです。この病態を「神経因性膀胱」といいます。

排尿障害には、膀胱にためることの障害と出すことの障害がありますが、脊髄損傷の場合には、その両方が合併することが普通です。
ためることがうまくできないと、膀胱が異常な収縮をおこし、尿失禁がおこります。また、それ以上に危険なことは、膀胱の異常な収縮によって膀胱に高い圧力がかかり(高圧蓄尿)、徐々に膀胱が傷んで変形してきます。膀胱変形が進行すると、腎臓に負担がかかり始め、放置しておくと腎機能障害をきたし、透析になってしまうことさえあるのです。

膀胱変形の写真

一方、脊髄障害では尿をスムーズに出すことができなくなります。多くの場合にはまったく自分の力では尿を出すことができません。腹圧をかければ見かけ上は排尿できることもありますが、膀胱に無理な力がかかったり(高圧排尿)、出しきれずに尿が残ってしまったり(残尿)という問題があります。このように尿を出す機能の障害でも、膀胱に負担がかかり、膀胱変形や腎機能障害をもたらすことが多いのです。

 脊髄障害に対する対処は、間欠導尿法が最も優れた方法です。異常な収縮に対しては、これを抑えるための抗コリン剤という薬の内服で対処する必要もあります。また間欠導尿ができない場合にはカテーテルを常時留置することになりますが、この場合には膀胱瘻といって、下腹部にカテーテルを留置する人工的な穴を作る方法が、長期的には合併症も少なく最善の方法です。膀胱瘻にするためには簡単な手術が必要です。

 いずれにしても、排尿をどうするかは、脊髄障害者の日常生活に最も切実な問題でありますし、また長期的に見れば不適切な排尿をすることによって、膀胱だけでなく腎臓の機能まで低下してしまうことさえありますので、排尿機能検査で膀胱の状態をよく把握したうえで、適切な排尿方法をおこなうことは極めて重要なことなのです。

排尿機能の検査

静脈性尿路造影の写真

当院泌尿器科では、開設以来、4千人以上の脊髄障害者の膀胱について、排尿機能検査をおこない、これに基づいて適切な排尿方法を選択・提案し、また長期間にわたって経過観察をおこなってきました。排尿障害の程度や種類を調べるための、排尿機能の検査機器も最新のものを設置しております。

また、たとえ適切な排尿方法をおこなっていても、ある頻度で、尿路感染症による発熱をきたしたり、膀胱に結石ができたりという合併症がおこることは避けられません。さらに、知らない間に水腎症という腎障害が進行しているということも、残念ながら起こり得ることです。
このような理由から、脊髄障害がある方は、安定した排尿方法であっても、1年に1回程度の定期的な尿路検査がぜひとも必要なのです。

また、尿失禁が多い、間欠導尿がうまくできない、留置カテーテルのトラブルに悩まされる…などの問題をお持ちの方は、ぜひ一度排尿状態の検査をお受けになることをお勧めいたします。排尿機能検査の結果と当院の経験を基に、より適切な排尿方法を提案することができます。当然ながら、尿路感染症、膀胱結石、腎障害(水腎症)、などの合併症の治療は、当院泌尿器科の最も専門とするところです。ただし、これらの合併症は、本人の自覚症状が無いうちに発見して治療することが重要です。重ねて定期検査をお勧めいたします

泌尿器科受診のお知らせ

泌尿器科をはじめて受診される方は こちらのページをご参照ください。

神奈川リハビリテーション病院泌尿器科
科長 田中克幸

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