神奈川県総合リハビリテーションセンター

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脊髄損傷

看護部

患者の利用状況

スタッフミーティングの写真
外傷や疾患により脊髄損傷となり、障害を受けた患者のリハビリテーションが円滑に進むように、多職種と連携し早期社会復帰に向けた支援を行っています。

近年は、患者の高齢化や家族背景の変化により、ソーシャルワーカーが必要なケースが増加しています。また、生活習慣病の褥瘡の発生などの合併症も多く、健康管理がより大きな課題となっています。

患者さまやご家族への支援

リフターでの以上訓練の写真
リフターでの移乗訓練
障害レベルに応じた日常生活動作の拡大、生活の質の向上に努めています。患者の自立度に応じ、家族やキーパーソンへの介護指導を行っています。

生活に密着する排泄については、患者さま自身が管理でき、ご家族が介助できる方法を一緒に検討しています。高位頸髄損傷の患者さまでもトイレ排泄を試みることもあります。

ADLの自立度は、患者さま本人の意志または受傷部位、身体的・精神的状況、ご家族のサポートにより大きく変化します。

患者さま・ご家族が今後どのような生活を望むのかを何度も話し合い、コミュニケーションを大切にしながら介護指導を行っています。

また、セルフケア能力の拡大に向けた援助、日常生活の再構築に必要な社会資源の活用方法についても最新の情報を提供し、一緒に取り組んでいます。

リハビリ目的の脊髄損傷入院患者の動向の図

褥瘡の看護・ケアについて

病棟では主に外傷や疾患により脊髄を損傷された患者さまを対象に、治療やリハビリテーションを行い、早期社会復帰に向けた支援を行っています。脊髄損傷は受傷部位により、四肢麻痺、対麻痺となり残存機能が異なります。高齢社会に伴い高齢の患者さまも多くなっています。また、脊髄損傷では褥瘡、骨折、尿路感染症、肺炎、糖尿病、高血圧症などの合併症がみられ、看護師は幅広い知識と高度な技術の提供に努めています。
今回は褥瘡の看護について述べたいと思います。

原因

脊髄損傷者の褥瘡は、長時間の同一体位、長時間の車椅子乗車などによる皮膚の圧迫、打撲、擦り傷、やけどなどの外傷、便・尿・汗などによる汚染や湿潤、栄養状態が悪いことなどが原因となり生じます。

治療と看護

褥瘡の治療は保存的治療と外科的(手術)治療があります。
保存的治療では、安静療法として、ベッド上安静・褥瘡部分の徐圧・坐位時間や車椅子乗車時間の制限・栄養状態の改善などに努めます。クッションを使用し、体位変換を4~6時間毎に実施し、創部と他の部位に発赤ができていないかその都度皮膚の観察を行います。褥瘡の状態によってはエアーマットを使用します。
栄養状態の低下が見られる場合は、外科医師、栄養士と連携をとり、全身状態をみながら食事の検討を行います。
皮膚の清潔を保ち、衣類やシーツのしわの防止をします。紙オムツは皮膚が湿潤しやすくなるため、極力使用しないよう指導し、排尿方法の評価や検討を行っています。また排便についても、時間を決めての排便コントロールを行い、便失禁の防止に努めています。

セラミック流動ベッドの写真
空気流動ベッド(クリニシステムベッド)
手術適応の場合、術後2週間程度は創部の安静のため空気流動ベッドで過ごします。このベッドでは体位変換は必要ありませんが、6時間毎に創部の観察と衣類とシーツのしわを除去します。座位はとれないため、食事時のみマットを上半身に入れて食事をしてもらいます。
クレーターマットの写真
クレーターマット
空気流動ベッドの後はエアーマットへ移り、座位・車椅子乗車可能となる頃には静止型マットレスへ変更していきます。
褥瘡治療中は安静度が制限されベッド臥床が長期になる場合が多いため、患者さまの多くがストレスを生じやすい状況にあり、受け持ち看護師を中心に精神的援助を行っています。

褥瘡予防

褥瘡が治癒すると、退院後の生活に向けて褥瘡予防の指導を行います。
褥瘡発生の原因を患者さまと共に考え、褥瘡を繰り返すことの無いように、生活の変更や除圧用具の選択、また日常生活での注意点などを指導していきます。

体位変換
自宅でも4時間または6時間毎に実施し、褥瘡好発部位の除圧を行う。
車椅子乗車中も30分毎にプッシュアップを行い、除圧と皮膚の蒸れを防止する。
マットレスや車椅子のクッションの選択についてアドバイスする。
皮膚の観察
褥瘡好発部位(肩甲骨、肘、腸骨、大転子、仙骨、尾骨、坐骨、膝、外踝、踵部、足指)に発赤がないか定期的(体位変換時)に観察する。
もし発赤ができた場合は、その部分を指で押して一時的に白くなり、赤色になるか確認する。
赤色のままの場合は血流が悪くなっているため、除圧を行う。
皮膚を清潔に保つ。
栄養面
全身の栄養状態をよくし、強い皮膚をつくるために高蛋白・高ビタミンの食品をとるようにする。
肥満にならないように注意する。
必要時入院中、栄養指導を行う。
その他
衣類のしわ、シーツのしわをつくらないようにする。
火傷(ストーブ、こたつ、たばこ、使い捨てカイロなど)に注意する。低温でも火傷してしまうため注意する。
傷をつくらないようにする。(トランスファー時ぶつけない、爪きりの時深爪をしない)
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