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変形性股関節症

変形性股関節症

 

 変形性股関節症(股関節症)は、股関節におこる変形性関節症です。そのため、この病気を知るためには、「股関節とは何か?」「変形性関節症とはなにか?」を知らなくてはなりません。
 そこで、ここでは、第一部として「変形性股関節症とは何か?」、第二部として「変形性股関節症の治療!」について述べさせていただきます。

                                                                        整形外科第一   杉山 肇

 

 

 

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第一部:変形性股関節症とは何か?

  股関節は、人の中で最大の関節であり、その構造の特徴から極めて大きな負担(力)がかかるようになっています。普段、片足で立っているだけでも体重の3~4倍もの重さが股関節にはかかり、早足で歩く時には約10倍もの力がかかると言われています。また、椅子からの立ち上がり動作や階段の上り下りでも大きな力がかかるほか、床へのしゃがみこみ立ち上がりの動作では股関節に極めて大きな負担がかかると考えられます。まずこのことを良く理解してください。

 

 

  大腿骨頭・臼蓋(語句).jpg大腿骨頭・臼蓋.jpg       骨盤・関節軟骨・大腿骨(語句).jpg骨盤・関節軟骨・大腿骨.jpg

 次に、理解してもらわなければならないのが、変形性関節症です。この病気は、軟骨が磨り減ることが原因ですが、加齢(老化)をベースにしています。そのため、一旦発症すると慢性的に経過して徐々に関節が壊れていきます。すなわち、厳しい言い方をすると治らないといっても過言ではないのです。膝関節が悪くなる人が多く、患者さんの数は2000万人から3000万人とも言われ、40歳以上の女性の50%がこの疾患に罹っていると推定されます。股関節の変形性関節症(股関節症)は、その1/10の300万人ぐらいと予想されていますが、実際には解りません。人工関節になる人の数をみて見ますと、膝と股関節はほぼ同じ(年間6万人程度)ですから、もしかすると徐々に悪くなっていても気づかないでいる人が多いのかもしれません。
  股関節のX線所見.jpg     ほぼ正常な股関節.jpg

 

 骨粗しょう症で、40歳を過ぎると骨密度が減少してくることをお聞きになったことがあると思いますが、軟骨も同様で加齢(老化)とともに細胞の勢いが低下して軟骨も痛んで部分的に減ってきます。軟骨が減少してくると股関節に炎症が起きて、痛みが発生し、されに進行するとよけいな骨が出てきて動きが悪くなってきます。この反応は、痛みを回避し、関節の機能を保とうとするある意味では人の防御反応と考えられますが、限度がありそのうち動きが悪くなりすぎて関節の機能が損なわれる状況になっていくわけです。同じ変形性関節症でも股関節が膝関節と大きく違う点は、股関節では、小児期に関節の発育が悪く、形が不十分(屋根の被覆が悪い)なため、軟骨が減ってくる人が多いということです。このことは、特に日本で多い傾向にありますので、若いうちに発見することがその後の治療の選択に大切になってきます。
 股関節は、多くの筋肉や靭帯に囲まれているためか、股関節症では、なかなか症状がでにくく(解りにくい)、症状がでていても股関節以外に症状がでる患者さんもたくさんいます。股関節症の一般的な症状は股関節の痛みですが、初期にはお尻や太もも、膝などに痛みや違和感、だるさなどが現れるため股関節の病気だと気づかないことも多いようです。一般的に病気に対してよく言われる言葉ですが「早期発見早期治療」がより重要になります。また、股関節症の発症や進行のリスクファクター(危険因子)としては、肥満やスポーツがあります。また、職業(重量物の作業従事)や先ほどの股関節の発育が悪い状態(臼蓋形成不全)も危険因子になります。これらの危険因子に注意することもとても大切です。
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第二部:股関節症の治療

  第一部でも触れましたが、極論を言えば股関節症の治療法はないということになります。そこで、まずは手術以外の治療で痛みを和らげ、進行を遅らせることが重要です。(但し、初期の段階では、寛骨臼回転骨切り術などで臼蓋の被りを良くすることにより、進行が防げることも有ります。)

★ 保存療法
 ● 生活改善:生活習慣のなかで股関節への負担を減らす工夫をすることです。
 日常生活で股関節にかかる負担を軽くするには、洋式の生活を心がけるようにします。靴はかかとに弾力性のあるものを選ぶことも効果的です。肥満(体重の増加)は股関節に大きな負担をかけるので、適正な体重を保つことも大切です。また、15分以上の連続し歩いたり運動をしたりするのは筋肉の疲労が出てきて、股関節に直接負担がかかってきますので、できるだけ避けるようにします。歩くと痛みがある場合などは、杖やカートを使うことが股関節症を進行させないために重要です。
 ● 温熱療法
 温熱療法とは、体を温めることで股関節の周囲の血行を改善し、筋肉をほぐして痛みを和らげる治療です。家庭では、39~40℃程度のぬるめのお風呂にゆっくり入ることで、効果を得ることができます。温熱療法のあとに運動療法を行なうと、関節可動域の維持につながりより効果的です。
 ● 運動療法
 運動療法では、「ストレッチ」と「筋力トレーニング」を行ないます。ストレッチと筋力トレーニングを組み合わせた運動には、変形性股関節症の進行を遅らせる効果があります。
 ストレッチ:まずはストレッチで股関節の周囲の筋肉を緩め、リラックスさせます。股関節の位置が矯正されて、股関節が動きやすくなり、股関節の可動域が広がります。
 筋力トレーニング:十分にストレッチを行なって股関節の位置が矯正され、股関節が楽に動かせるようになったら、筋力トレーニングを行います。股関節の周囲や太もも、お尻の筋肉を動かすことで、股関節を支えるための筋力をつけていきます。この時、注意することは、運動療法が効果的であるといっても、やりすぎは禁物です。股関節の中の炎症が強くなり、結果的に進行を早める結果にもなります。平均台の上でトレーニングをしているようなイメージを持っていただければとおもいます、落ちては何もなりません。翌日に疲労を残さない程度の運動量を目安にして、毎日続けることが重要です。
     体操.jpg

 

両足を開いたり閉じたりして股関節の動きをスムーズにします。
膝にゴムのバンドを巻いて行なうと、股関節周囲の筋力トレーニングになります。
● 薬物療法
 急に生じた強い痛みや、進行期や末期の強い痛みに対しては、薬物療法で対処します。消炎鎮痛剤(抗炎症薬)を用いて、炎症を抑え、痛みを和らげます。外用薬、内服薬、注射の3種類があります。これらの薬は、皆さんが一般的に「痛み止め」と呼ばれている薬ですが、その意味は、炎症を抑える薬で炎症が抑えられた結果痛みも減少すると考えてください。そのため、医師から薬を出されても飲まないで我慢するのは、間違っていることがあります。また逆に、薬で痛みが抑えられているかといって、無理して激しく動く(トレーニングする)というのも、かえって病状を悪化させてしまうこともありますので注意してください。薬物療法では薬を適切にしようすることがとても重要です。

★  手術療法
 「変形性股関節症」では、「生活習慣の改善」や「運動療法」などによっても症状が軽減されない場合や、病状がかなり進行している場合などには、「手術」が検討されます。
  手術が行なわれるかどうかは、痛みの程度や生活の不便さ、仕事の内容、年齢など、さまざまな面を考慮して決められます。なかでも、痛みのために「日常の動作が不自由になる」「外出するのがつらい」「夜痛みで寝付けない」など、日常生活にどれだけ支障を来しているかということが、手術を検討する最も重要な要素になります。
  変形性股関節症の手術方法には、大きく分けて自分の関節を温存する関節温存手術と関節を人工のものに変える「人工関節置換術」があります。関節温存手術には、関節鏡を用いる「関節鏡手術」、骨を切り取ってずらすなどして股関節の形を整える「骨切り術」や筋肉の一部を切り離して股関節にかかる荷重方向を変える「筋解離術」の3つがあります
● 関節温存手術(自骨の手術)と皆さんが呼んでいます
 ・股関節鏡手術
 関節鏡手術には、関節専用の内視鏡である関節鏡を用います。股関節の周辺の皮膚を2~3か所、1cm程度切開して孔を開けます。そこに直径5mmほどの関節鏡と手術器具を挿入して手術が行なわれます。関節鏡によって映し出された関節内をモニターで観察しながら手術器具を操作して手術を行ないます。
 炎症を起こした滑膜や痛んだ関節唇を切除したります(関節デブリドマン)。さらに、異常に形成された骨を削って関節の適合性を良くしたり、股関節の動きを制限している腸腰筋の腱を切り離すことにより股関節が動けるようにします(関節授動術)。手術後は、股関節を刺激していた関節軟骨の破片などが取り除かれるため、股関節内の炎症が治まります。多くの場合、手術後は痛みが改善されて、股関節を動かしやすくなります。この手術は、変形性股関節症の初期から末期までの患者さんで、痛みがあって困っていて骨切り術や人工関節置換術などの侵襲の大きな手術ができないか望まない患者さんが対象になります。
 手術は「全身麻酔」あるいは「腰椎麻酔」で行なわれ、手術時間は2~3時間程度です。患者さんの体への負担が比較的少ない手術なので、2-3日で歩行は可能となりますが、その後のリハビリが重要なので入院期間は2~4週間程度必要です。
 関節鏡手術の利点としては、「傷痕は小さくあまり目立たない」、「筋肉への影響がほとんどない」などがあげられますが、その分効果は限定的で、80%の効果であると考えてください。この手術では、関節軟骨を保護するために、股関節内に水を充満させて手術を行なうので、術後に股関節の周囲に「腫れ」や「しびれ」が現れることがあります。ただし、これらの症状は時間がたてば自然に治まります。
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 ・骨切り術
 骨切り術では、自分の骨の一部を切り取って移動させ、変形した股関節の形を整えます。「骨盤側を切り取る手術」と「大腿骨側を切り取る手術」がありますが、代表的なのは骨盤側の骨を切り取る「寛骨臼回転骨切り術」です。
 寛骨臼回転骨切り術では、臼蓋のくぼみを切り取って、外側へずらします。その後、骨盤の骨などを一部移植して臼蓋の形を整えます。臼蓋が大腿骨頭全体を覆うようになるので、股関節の一部に集中していた負担が全体に分散し、関節軟骨がすり減りにくくなります。骨切り術は、変形性股関節症の初期か、進行期でも比較的早い段階の患者さんで、基本的に60歳以下の人が対象です。
 手術は、全身麻酔で行なわれ、手術時間は2時間前後で、入院期間は1~2ヶ月程度です。骨切り術の場合、手術中の出血が多くなることがありますが、あらかじめ採取しておいた患者さん自身の血液を輸血することで対処できます。なお、まれに切り取った骨がつきにくいことがあり、その場合には杖を使う期間が長くなりますが、再手術が必要なことはほとんどありません。
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● 人工股関節置換術
 人工関節手術は、傷んだ股関節を人工関節に置き換える手術です。傷んだ股関節を取り、臼蓋と大腿骨頭がセットになった人工関節を入れて、骨盤と大腿骨にそれぞれ固定します。手術後は、ほぼ完全に痛みがなくなり、不自由なく歩けるようになります。人工関節手術は、病状がかなり進んだ進行期や、末期の患者さんが対象です。一般に、人工股関節の耐用年数は20年ほどなので、基本的には60歳以上の人に適した手術です。
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 全身麻酔で行なわれ、手術時間は1~2時間程度、入院期間は1か月程度です。
 リスクとしては、手術後に人工関節が外れる「脱臼」が起こることがあります。脚の付け根を内側にひねったりするような動作は脱臼を起こしやすいので、行わないようにしてください。また、「感染症」にも注意が必要です。手術直後に起こることはまれですが、手術後1年~数年たって、人工関節の周囲に細菌が感染して痛みが起こることがあります。「虫歯」や「膀胱炎」「胆嚢炎」「扁桃炎」など、股関節以外の部位の細菌感染が起こることもあります。そのため、このような病気を放置せず、きちんと治療を受けるようにしてください。
 人工股関節手術のここ20年の進歩はめざましく、現在では、98%の患者さんが順調な経過をたどり、術後に痛みのない生活に戻られています。人工関節手術後の患者さんは、股関節が一見正常に戻ったように感じますが(手術した医師もそう感じるものです)、必ずしもそうではないことを理解しなければなりません。前述しましたように、術後経過が良好でも、脱臼や感染があとになって起きることがありますし、さらには骨粗しょう症との関係もあって転倒などによる人工関節の周囲骨折が増加してきています。そして、人工関節の磨耗による骨吸収による再置換も考えなくてはならないのです。厳しい表現になるかもしれませんが、人工関節は、ある意味「外から見えない義足」と思っていただければいいと思います。そのため、まれには比較的早期に壊れることもありますし、徐々に傷んで使えなくなる時期が来ますし、行政的には下腿切断と同じ身体障害者の4級になるわけです。手術の後は、こういった異常のチェックがとても重要になりますので、油断しないで股関節外科医を定期的に受診してください。関節鏡手術や骨切り術でも同様です。これらの手術は、変形性股関節症の進行を遅らせる治療法で、症状がほとんどなくなっても、股関節は完全に健康な状態に戻ったわけではなく、病状は徐々に進んでいく可能性があります。したがって、手術で症状が改善しても、定期的に受診することが必要です。同時に、変形性股関節症の進行を防ぐために、手術後も股関節に負担をかけない生活を続けていくことが大切です。    

 

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